FD初年度の授業公開を振り返って

宮澤 正明

 FDワーキングが動き始めて間もなく1年になろうとしている。この間の活動として、3つの授業を公開して授業開発の在り方を検討してきた。また、公開授業や他大学のFDに関する情報を「FD インビテーション」を通して報告し、広報に努めてきた。

 さて、公開授業を参観する機会を得て、今後に生かすことができる内容がたくさんあった。分野によって授業の展開や方法などは異なるものの、授業者の授業にかける情熱はもとより、資料の作成方法、学生とのコミュニケーションの取り方、巧みな話術などを垣間見ることができた。また、授業後に行われた検討会において、授業方針や授業方法などについて細部にわたって説明していただき、授業に臨む姿勢、日頃の苦労、評価方法などを具体的に理解することができ、大きな収穫を得ることができたのである。

 さらに、自分自身の授業を公開して、準備の期間がなかっただけに今思えば冷汗三斗の寒々しい内容ではあったが、普段着の授業を観ていただいた上に、様々な客観的意見を頂戴したことは格好の反省材料となったことは言うまでもない。何よりも、わずか1回ではあったが公開という一種の洗礼を受けたという安堵は、これからの授業実践でわずかばかりの自信や意欲につながると確信している。これまで、小・中学校や高校の授業を参観し、助言者の立場に立つことを何回も経験し、その度に、「では、自分の授業はどうなんだ」という後ろめたさを感じていた。今回の経験によって、それをわずかばかり払拭できたような気がする。その意味で、参観や公開の機会をもっと早い時期にもつことができていれば、授業への意識は変わっていてだろうにと臍を噛む思いである。

 本WGでは、今後も公開授業をはじめとしてFDに関する広報活動を推進していく計画である。FD推進のためにご理解とご協力をお願いするとともに、特に若い先生方には、授業開発の一助として今後の企画を活用されるよう期待したい。

 FDワーキンググループ主催の第3回授業研修会が12月4日(水)時限(10:30〜12:00)K-229教室において開催された。前回に引き続き若手教官を代表して田中武夫先生の「英語C」を公開していただいた。これまでの研修者の授業参観形式による方法から研修者が授業に加わる全員参加の新しい公開方法が試みられ、受講定員の20名の学生と研修参加者8名でコミュニケーション型の授業が繰り広げられた。

(S)



授業研修会 授業実践を終えて

英語教育講座  田中 武夫

 私の英語Cの授業では、「コミュニケーション」を英語で行う力、とくに、自分自身の事柄を簡単な英語で表現する力を育てることを目的として行っている。英語での自己表現活動をどのように行っていくべきかという課題は、自分自身の研究課題でもある。試行錯誤を繰り返す中で、市販の教科書を使って指導する授業形式をやめ、ペアワーク、グループワークを取り入れながら、自分自身の考え、意見、個性を自分の持っている英語力の範囲内で表現させる形式で授業を行うようにしている。この授業の最終段階では、英語を使ったディベートをさせるのであるが、今回の授業は、5回目の授業にあたる。自分の好きなものを受講生全員に向けて英語で紹介するという基本的な活動を行った。

 この授業の中で、心がけていることを3つ紹介したい。1つ目は、自分自身のことを表現させるということである。表現内容のテーマは、自己紹介、自分の好きなもの、身近なトピック(映画、食べ物、スポーツなど)、自分の意見(山梨大学、英語教育など)であり、借り物の考えではない、自分自身を語らせることにある。学生に自分を語らせるためには、教師自身が自分を語り例示することが必要であり、それがうまくいけば学生が真剣に取り組んでくることを学んだ。

 2つ目は、コミュニケーション、とくに、自己表現では、表現したことを聞いてくれる他者がいることを意識させることである。友達の発表を聞いている学生には、発表に対するコメントを自由に書かせるようにしている。それを発表者に渡し見せる。教師のために発表するのではなく、他の受講生に自分の個性をアピールするというチャレンジにつながっているようである。

 3つ目は、振り返りシートを配り、その授業で行った表現活動を通して、自分が気づいたことや今後生かしていきたいことなどを学生に書かせることである。英語に関わらず、日頃のコミュニケーションにおける大切なポイントを教師から教えるのではなく、学生自身の力で気づかせたいからである。同時に、私にとっても、学生の気づいたことや考えたことを読むことにより、授業運営のフィードバックにもなるし、授業を行う際の励みにもなっている。

 普段は、附属小中学校などで他の先生方の授業を見せていただくことが多い中、今回の公開授業は、自分の授業を他の先生方に見ていただく、私にとっての初めての経験であった。授業後の反省会では、この授業で私が何を意図して指導しているのかという本質的な部分を、他の先生方に理解していただけたことに対し、素直にうれしいと思った。また、言いたいことを英語で表現できない場合の教師からのフィードバックがほしいというご指摘をいただいたが、自分でも不十分さを感じていたことだけに、今後の課題として再認識できたと思う。今まで自分が取り組んできたことと今後の課題を再確認することができ、このような貴重な場を与えていただいたことに、心から感謝したいと思う。




FD授業研修に参加して

国際文化講座  清水 知子

 昨年12月4日、田中武夫先生の授業に参加させて頂いた。科目は英語C(英語コミュニケーション)である。知られるように、本学の語学は、L,R,W,B云々と目的に応じていくつもの項目が設定されている。私自身、専門の他に英語の授業も担当しているが、実は、自分の大学時代をふり返っても、これといって特に心に残った語学の授業がない。大学というと、何となくなく、中学、高校とはちがった授業を期待してしまうが、英語に関してそのようなことはありうるのかどうか――専門はともかく、語学の授業となると、いまだに試行錯誤の日々である。そういうわけで、この授業に参加できることは、私にとって願ってもない機会であった。

 教室では、私も含め、参加された先生方もみな学生とペアをくんで、実際の授業に臨んだ。授業はすべて英語で行われた。お互いの自己紹介に始まり、この日のテーマ、「私のお気に入りアイテム」を紹介しあう。ペアは毎回田中先生が指定されているようで、いつも同じ友だちとばかり組んで授業に臨むことはないようであった。みな、田中先生が口にする、ゆっくりとした正確な英語に耳を傾ける。日本人同士で慣れない英語を使うことに、ちょっとした緊張と照れが感じられるものの、逆にそれが授業を新鮮なものにしているように思えた。読めば簡単な英語を実際に口にすることは結構難しいのである。ペアとの会話が終わると、何人かの学生が発表することになった。それぞれ自分の「お気に入りのアイテム」を手にした発表を聞き、みなでコメントや質問を小さな用紙に書く。これは発表後に本人のもとに届けられることになっていた。時間配分や発表に対するコメントをはじめ、英語を聞く、書く、話すことが無理なくはいった田中先生の入念な準備と工夫によって、90分という時間は、あっという間に過ぎていった。

 リスニングやライティング等によって、それぞれの授業で重視するものは違うのであろうが、私にとっては非常に貴重な経験であった。このような機会をくださった田中先生とFDの先生方に心から感謝を申し上げたい。ここで得た貴重な体験を今後の自分の授業に活かしていきたいと思う。

ファカルティ・ディベロップメントの推進

林 尚示

 このところファカルティ・ディベロップメントの事例を見ていると、「学生とともに」、「学生に支えられて」、「教師のスキルアップ努力には終わりがない」といった言葉に出会います。

 1987(昭和62)年9月から2000(平成12)年12月まで続いた「大学審議会」の提言を受けて、全国の大学では、高等教育の個性化の一環としてファカルティ・ディベロップメントに取り組んでいます。ファカルティ・ディベロップメントは公開授業の開催や履修科目登録の上限設定などの形態で実施されますが、その目的は大学改革の推進にあります。それでは、大学改革をなぜ推進しなければならないのでしょうか。それは、「社会の要請に的確に応え、国際的にも評価される特色ある大学づくり」のためとされています。

 特色あるファカルティ・ディベロップメントとしては、例えば、東京農工大学工学部では1999(平成11)年度から、優れた講義を行っている教員に「最優秀講義賞」を送っていたり、また、京都大学では公開実験授業を設定したりしています。

 文部科学省の高等教育局大学課大学改革推進室で把握しているファカルティ・ディベロップメントの内容と大学数をもとに、全国の国立大学のファカルティ・ディベロップメントの推進状況を表にすると次のようになります。

国立大学ファカルティ・ディベロップメント実施状況2000(平成12)年2001(平成13)年
新任教員研修会45大学55大学
教員相互の授業参観35大学43大学
センター等の設置15大学22大学
(文部科学省http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/index.htm,2002/11/08報道、参照)

 教育人間科学部では、積極的にファカルティ・ディベロップメントを推進しています。現在は山梨大学全体でのファカルティ・ディベロップメント・センターの設立や,学生の履修科目登録の上限設定などについて意思決定する段階に来ているのかもしれません。




他大学のFDの試み    第3回 ……一橋大学の巻……

 本年1月5日付けの朝日新聞のトップ記事は、「教官の『通知表』一橋大全公開」というものであった。同大学は全学部のほぼすべての授業で学生による5段階の授業評価を年2回のペースで実施し、結果を科目ごとに教官を含めて学内外に公開するという。学生にはその結果を冊子で配ったり、図書館で閲覧できるようにする。外部からの問い合わせにも応じる。記事には学生に尋ねる共通質問事項も掲載されていたが、この事項は本学で実施されている授業評価の質問事項とほぼ同じ内容であった。一橋大学の試みの新しさは、「通知表」に教官の実名と科目ごとの平均点を記し、それを学内外に年2回公表する点にある。同大の担当責任者は「通知表」全面公開の理由をつぎのように語っている。「教員を刺激して、授業を改善し、教育水準を上げたい。教官や科目名をはっきり出すのが、学生からの批判にきちんと答える道だと考えた。」

 学生による授業評価それ自体は、FD(教育方法改善のための活動)ではないが、授業評価はFDとセットで実施される必要があるし、実施されねばならない。さらに新たな基準に基づく成績評価法も導入しなければ意味がない。授業評価を公開することになれば、良い評価を短時日に得るために、教官は学生に迎合した授業を行うし、また成績評価もいまの絶対評価では甘くなる恐れがある。同大がFDと新たな成績評価法を導入するかどうかは不明だが、早晩そうした試みに踏み切らざるをえないことは確実である。同大の試みを注目していきたい。

(O)



FD WG 広瀬信雄 宮澤正明 石垣武久 大友敏明 菅沼研一 田中武夫